オープンマイク

Open-Mic

無添加書道という在り方

-テロワールな生き方へのステップ-

 オープンマイクは『つながる・めぐりあう』をテーマに、ホストとゲストが “セッション”するスペースです。共に響き合う仲間、テロワールな人たちとのトークなどから、さまざまなテロワールのカタチをお届けします。
 フランス語で「土地」を意味するterreから派生した“テロワール”。ワインやコーヒー、お茶などの品種における生育地の環境(地理、地勢、気候など)から生まれる特徴のことを指します。

第二回目オープンマイクは、Terroir.linkの編集長中田雅史自ら突撃対談。友人でもあり、テロワールな在り方を書道という形で表現している無添加書道遠藤夕幻のマスミ東京ギャラリースペースで開催された作品展「いきる いのち」に行ってきました。


プロフィール

Guest/遠藤夕幻

・夕幻書道教室:主幹
・著書:あなたが いたから できたこと(自叙伝・作品集)
・武蔵野美術大学:臨時講師
・宮城県石巻市雄勝町:硯職人 復興支援活動 など

・日本酒ラベル / 企業ロゴ / 出版物題字 / 販促品デザイン / 看板制作 / 落款制作 / ライブパフォーマンス / 講演会 / コラボイベント / 書の奉納揮毫 / etc.

遠藤夕幻(ゆうげん)と申します。
生業は、書道です。書道で家族を養っています。
『無添加書道』という言葉を授かりました。それは、自分自身の “志” つまりは生き様を現す言葉だと思っております。

○ 無添加書道 HP
https://peraichi.com/landing_pages/view/yugen

○ 字源セッション HP
https://peraichi.com/landing_pages/view/jigen-session

Interviewer/中田雅史 -Nakata Masashi-

 北海道島牧村出身。島牧と銭函にて二拠点暮らし。北海道を拠点に風土を醸してゆくテロワールシンガーソングライター。雄大な自然を想起させる詩の世界観と深く温かな歌声、アコースティックギターで奏でる楽しさと優しさと懐かしさの同居する曲は、聴く人のココロとカラダを不思議と調和していく。各地での様々なスタイルで行うライブ以外にも、講演・音楽プロデュース・銭函フェスの主宰、楽曲提供・配信・TV・ラジオ・youtubeチャンネル「masashihouse」・WEB MEDIA「Terroir.link」・顔の見える暮らしの実践・地域おこしなど、多方面に活躍の場を広げている。
http://nakatamasashi.com


雅史:テロワールな書道家といえば、夕幻だと思ってます。

夕幻:ありがとうございます(笑)

夕幻:個展にきてみてどう??感じてみて?

雅史:書のものすんごい存在感にやられてます!!

書道の真ん中のキラキラしたところに還るように削ぎ落とす

雅史:無添加書道ってどんなもの??テロワールだなと思うものが詰まっていると思うんだけど

夕幻:例えば、よく言うのが書道の先生とかっていうのは、どこどこ界の誰々先生のお弟子さんでこれこれですっていう前書きがあるわけよ。これが自分の感覚としてはいらないわけね。肩書きとかで書道やっているわけじゃないし。書道の真ん中のキラキラしたところっていうのはみんな持っているはずなんだけれども、それにどんどんどんどん添加物(自然ではないもの)が添加されていって、見えなくなったりとか、どこかにいってしまったように感じているだけで、ほんとはあるはずなんだ、というのが無添加の意味合い。削ぎ落とす感じで元々あるものに還る感覚なんだよね。

経済の回し方も無添加にしてゆく

夕幻:さっき雅史が「風(作品)、いいね!」っていってくれたけどあの風もさ、この間、これって風っていう字を書きにいったんですか?っていう質問をされたんだけども、そういうわけじゃない。現地に行ったら風という字を書く必要があったから俺がたまたま書いたっていうそんな感覚。

しかもさ、あの風もね、値段をつけているわけですよ。値段をつけるっということは、三年前ならすごく抵抗があったんだけども、あれは書くにあたって何人か関わってくれていて、売れましたってなった時に、自分で全部もらうんじゃなくて、その人たちに1割でも2割でも分配して循環するようにしたいなって、経済の部分もね。そう思っているから、自分のためだけじゃないから値段をつけられるんだなって最近気がついて。

これがないと作品展が成り立たないぜっていうような金額だと重いわけ。近江商人のような三方よしの巡るしかないじゃんみたいな状態を随所に盛り込んでいるんだよね。

雅史:無添加書道の開催の仕方とか、分配の仕方まで無添加になってきたことだね!それが三年前の個展と違うところなのかな。

夕幻:無添加分配ね(笑)前回の個展から三年経っての違いっていうのは、作品の違いとかじゃなくて、もっとバッググラウンドというか、もっと根元の部分の違いを感じてるね。

水の持っている性質を書道に活かす

雅史:無添加書道の水とか墨、紙についてもぜひ。

夕幻:水ってめっちゃ重要じゃん。令和が水の時代じゃん。水って記憶を留めておく、そんな装置であったりすると思っていて。

土地の記憶や人の記憶を持っていたりするってなった時に、それこそこの作品の「神(写真右)」という神武天皇の産湯と言われているような沖縄の湧き水を使って書いてますとか、あっちの奥の「神(写真左)」はイスラエルで書いていきた神なんだけどイスラエルのガリラヤ湖というところの水を汲んで書いてるだけども、このガリラヤ湖ってさ、イエス・キリストのお弟子さんでペテロさんって人がいるわけ。

ペテロさんは元々ユダヤ教で、イエスを迫害する側の人だったわけ。だけど、イエスの教えに、もうキランってなって、わたしが殺そうとしていた男がこんなに素晴らしい人だったんだって言って改心するわけだよ。それで、第一のお弟子さんになるんだけど、このペテロさんがもともと漁師だったわけ。このガリラヤ湖で漁をしていたわけよ。聖書の一部に出てきている場面、何千年か前にペテロさんが実際にいたところの水で墨をするっていうことで、現地のエネルギーとか人のエネルギー、記憶みたいなものをグッと入れたのを墨にさらに練り上げて、筆に乗せて書くっていうのが水にこだわる理由というか、それが自然というか、そうじゃないと墨すれないというか。

その土地の水を使うのがごくごく当たり前と思っていて。水の持っている力とか水の持っている性質みたいなものを書道って活かせるものだなと思ってるんだよね。書き心地も違うしね。

テロワールと共鳴していく無添加書道

雅史:日本の麻の炭を使って、日本の水も使って、あと職人さんたちが作った硯を使ったり。

夕幻:誰が作ったか知ってるからね。職人さんとか、これは、誰々が作ったものだってパッパッって顔が浮かぶからね。書いたものがすごいでしょって世界じゃなくてさ、書かせてもらえて有難うっていうことだから。一人でできないことばっかりだから、やっぱり。

あ、これをテロワールというのか!!!

雅史:テロワールというでしょうね(笑)テロワールともいうし、無添加ともいうでしょうね。俺と夕幻は同じような近いことをしているよね。

夕幻:テロワールミュージシャンとして響くものがやっぱりあるんだね。目指してるところは一緒だよねっていうか、入り口が違うだけっていうか。音楽です、書道です、施術です、彫刻です、とか、道はいっぱいあるよね。

雅史:それぞれの違う分野で名前もちょっと違ったりするけど、俺はただテロワールって名前を使ってるだけで、夕幻は無添加書道というし。そこに共鳴するものがあって、これから「Terroir.link」と言うメディアを使って色んな人たちにインタビューしながら今後記事として発信していきたいと思ってる。その中田雅史最初のインタビューが夕幻なんです。

夕幻:それの第一回目!光栄でございます!

テロワールは地球にいいでしょ?

遠藤夕幻と息子鈴祈と中田雅史と風

夕幻:Terroir.linkの想いもせっかくだから聞かせてよ??

雅史:夕幻のように大地が循環することを考えて書を書いている、職人さんたちにまで顔の見える循環を考えて書いたり、想いを紡いで書いてゆくこと、その地の水を使って書いたりすること、めぐりあっていくこと、つまり、自分の中のテロワールを持つことでそこに住むところから、自らがよくなり、周りもよくなり、地球をよくしていくことに繋がっていくでしょ??

夕幻:うん、地球にとても優しい。地球は喜ぶ。

雅史:そんな気づきになるようなことを発信するのがこのメディア「Terroir.link」の役割だと思ってる。

書道っていうものは、日本の風土によって育まれてきた文化で、これを発信していくことは日本と言うオリジナリティを届けることだと思う。それは、日本人が日本の文化を背負って表現することだから途轍もない説得力を持つ素晴らしい芸術だよね。

テロワールミュージシャンは、風のような役割だと思っていて、各地にある風土に育まれてきた文化や、夕幻のような生き方や在り方と言う種を風に乗せて、大地へ届けるように伝えて行けたらなぁと思ってます。

夕幻:素晴らしい!!(拍手)

雅史:素晴らしい第一回目のインタビューになりました。有難う。これから素晴らしいものにしていきたいと思います!!夕幻のこれからも楽しみにしています。

雅史、夕幻:ありがとうございました。ではまた!!